「留学生は英語が出来るもの」なんて思ってはいないでしょうか?
留学先にもよりますが、それは確かに正解でしょう。米国にしろ、英国にしろ、豪州にしろ、英語圏であれば英語が話せるのは当然です。それの何がいけないのでしょうか?
ところが、そういう考え方が実は危険であることに多くの日本人が気づきません。
別に間違いではないのです。けれども、そういう考えが「先に来る」のが非常に危険なのです。
実は、近年日本人留学生がどんどん減っています。特に米国への留学は私が渡米した時に比べるとかなり減りました。
これには少子化や価値観の変化、学費の高騰など様々な要因が絡んでいるのですが、意外に英語力に対する認識の変化も要因の一つとしてあるように思われてなりません。
考えてもみて下さい。今時、スピードラーニングや駅前留学やSkype英会話で英語を習得する方法は沢山あります。わざわざ英語を習得するために海外に行くなんてお金の無駄です。
私自身留学の経験がありますが、英語のためだけに渡航費と学費と生活費を工面するのは無駄だと感じています。
もちろん、留学には「英語を話さないとならない環境」を確実に得られるというメリットはありますし、短期留学ぐらいだったら悪くない選択肢でしょう。本気で英語を習得しようという気持ちがあれば、1ヶ月もあれば日常英会話は習得できるはずです。
ですが、本格的に英語圏の大学を卒業しようとする人が「英語の習得」を第一目的に掲げるのは、かなりピントがずれています。
確かに4年も英語圏で過ごして、大学を卒業すればかなりの英語力が得られますが、果たしてそのためだけに大金をかけて海外の大学に行かせる価値があるでしょうか?
もちろんありません。というか、本当にその価値があれば親は留学させるはずです。しかし、結果は明らかで留学生は減っています。さらに言えば、短期留学だってお金に見合うかどうか疑わしいです。
留学なんて金の無駄。そういう結論に至るのも当然です。
なぜなら、留学の目的が「英語の習得に集約されてしまっている」からです。
日本人は英語恐怖症などと言われていますが、みんな多かれ少なかれ英語が苦手です。そんな中で、英語圏で生活してきた留学生がいれば「英語は任せた」となるのも当然でしょう。ですが、こういう感覚が広がっていくと、「留学生の強みは英語力」となってしまいます。
世界を見てみれば分かりますが、日本で当たり前になっている「語学留学」というのはそれほど割合は多くありません。
基本的には、若い学生の留学は「見識を広めるもの」であって、「特定のスキルを身につけるもの」ではないのです。
もちろん、社会人になれば特定のスキルを身につけるために海外に行くというのも多くなりますが、専門学校ならともかく、普通科高校や4年制大学に通うような学生の選択肢ではないでしょう。
じゃあ、その「見識」とやらは大金をかけるに相応しい価値があるのか、という話になりますが、それこそ語学力に比べれば未知数でしょう。
日本に戻ってくるにせよ、海外でそのまま働くにせよ、日本で得た経験と海外で得た経験を効果的に活用出来る人材は有用です。そうでなくとも、日本人に多様性をもたらすことができます。
多様性は競争の中で生き残るためには非常に重要です。これを失ってしまうと、日本の強みが失われてしまった時に生き残る方法がなくなります。
また、海外との競争の中で英語力の需要は高まっています。高まっている分、様々な方法で英語力を得られるようになりました。相対的に語学留学の価値は落ち込み、そのせいで留学生全体の数がはっています。
そのせいで、今までは「語学留学のついで」に得られてきた留学生の見識を活用できなくなっています。今の日本に本当に必要なのは、日本を俯瞰的に見れる立場に立ち、海外で見識を得てきた人材なのではないでしょうか?
はっきり言ってしまえば、別に英語圏に留学する必要なんてありません。むしろ、アメリカナイズされた日本人がアメリカに行っても得られるものは少ないでしょう。
お金がないのなら、中国でも、台湾でも、東南アジアでも良いのです。
日本とは違う世界を見てくることで、他の日本人とは違う視点を持てる様になり、他の日本人とは違うアプローチで問題解決が出来るようになります。
しかし、非英語圏に留学した人が正しく評価されているかというとかなり疑問に感じます。ある程度の大企業になってくると「英語力はどうでもよい」とはっきり言ってくれますが、中小企業では未だに「留学生には英語力」を期待する企業も多いようです。
本当に日本が成長するためには、留学生から英語以外の何かを引き出す必要があるでしょう。