陸自の誤射騒動についての説明が出てきました。簡単にまとめると、「請求ミス」「確認漏れ」「練度不足」が原因だったみたいです。なんだか自衛隊の質が気になってくる所ですが、実のところどうなのでしょうか?
(陸上自衛隊HPより引用)
自衛隊の28年度の予算割を見ると、陸自1.7兆円・海自1.2兆円・空自1.1兆円となっており、陸海空の中でもトップです。しかし、自衛隊の人件費が全体で2.1兆円。人員の数が陸自16万・海自4.5万人・空自4.7万人となっており、単純計算で陸自予算の半分以上が人件費になっていると考える事ができます。
実際に、陸自の予算の7割が人件費になっていると言われていて、海自や空自に比べると人員あたりの装備予算が小さくなりがちです。もちろん、海自や空自が扱う兵器はとんでもなく高価な高性能兵器ばかりなので当然と言えば当然でしょう。それでも、訓練に使う実弾が足りないとまで言われる事のある陸自が十分に訓練できているのかどうかは怪しい所です。
今回の事件でもそうです。「請求ミス」や「確認漏れ」が重なる事が稀にあります。しかし、弾薬を貰った兵員が実弾に気づかないというのはかなりお粗末でしょう。
これには、訓練に参加した兵員が後方の輸送部隊員で構成されており、実弾による訓練を殆どしてこなかった事が原因だと説明されています。
輸送部隊といえば戦場でも特に戦闘機会の少ない部隊です。米軍でさえ、かつては輸送部隊の練度が低くイラクやアフガニスタンで遭遇したゲリラ的な待ち伏せ攻撃によって甚大な被害を被りました。
どうやら、自衛隊も軍隊の例に漏れず輸送部隊の練度は低いようです。さすがに有事に真っ先に動く中央即応集団の練度は世界屈指だと信じたいところですが、それ以外の部隊練度には少々疑問が残ります。
こうした軍隊の練度を図るには訓練や実戦を見るのが一番です。陸自の練度は高いと国際的な合同訓練でも評判ですが、これはこうした訓練に参加する一部のエリート部隊だけでしょう。他の大多数の部隊がどうなってるかはわかりません。
自衛隊は実戦経験が無いと言いますが、実戦経験のない軍隊というのは日本以外にも結構あります。むしろ、毎年のように実戦経験を積んでいる米仏英露が異常なのかもしれません。しかし、日本は海に囲まれた国であり専守防衛を誓っています。同じように海に囲まれている英国や豪州は海外に陸軍を派遣して実戦経験を積ませていますが、陸自が海外で戦闘を行うことはありません。
法改正でその可能性も出てきましたが、戦ってみないと訓練や装備の有効性は分からない部分が多く、「失敗から学ぶ」事が出来ません。実戦における失敗となると間違いなく死者が出ます。しかし、その失敗から各国の軍隊は様々な事を学んで成長しています。日本の陸自は他国の失敗からどれくらいのことを学んできているのでしょうか?
もちろん、同じことが海・空の自衛隊にもいえます。ただ、海・空の実戦経験はそれこそ他国でもかなり少ないです。むしろ海自は機雷掃海や不審艦追跡などで経験豊富な部類に入るかもしれません。陸自も何度か海外派遣を経験しており、災害派遣の練度についてはかなり高そうです。しかし、戦闘となるとどうでしょう?
緊張感という面でも、陸自の練度が保たれているか疑問が残ります。空海は領海問題や領空侵犯などで度々他国の航空機や艦船と対峙しています。それも当然互いに実弾装備であり、兵士がその気になれば戦闘が発生する状況が実際に起こっているのです。海自艦が中国艦からレーダー照射を受ける事態や空自機が中国戦闘機に肉薄される事態も発生しており、誰かが一つでもミスをすれば死者が出ます。
訓練の時でも、現場の空気はかなりピリピリしたものでしょう。乗員やパイロットは実際に戦闘が起こるかもしれない状況を経験しており、本当に死ぬかもしれないという状況を味わっているのです。
しかし、陸自はどうでしょう? 果たして海空並の練度が保たれているのでしょうか?
空海の練度が高ければ十分なのかもしれません。でも、陸自が全体的に軽視されているような気がしています。戦場に出て実戦を味わう必要は全くありませんが、緊張感を持って訓練を行えるような、実戦に近い訓練環境などを整備できないものでしょうか。