保育士や介護士はいつでも人手不足と言われている。当然だろう。高齢化社会で介護が必要な人が増えていて、少子化で働き手が減った代わりに女性の社会進出が進んだ結果、子供と祖父母の面倒を自分で見られなくなるという家庭が増えた。
仕事優先で家庭が疎かにされやすくなったのだから、家庭のサポートを行う「保育士」や「介護士」の需要は高まってくる。ところが、本来であれば需要が高くなれば上がるはずの保育士や介護士の給料が中々増えない。一体、どうすれば給料が上がるのだろうか?
保育士や介護士の給料はなぜ低いのか?
様々な理由が上げられているが、根本にあるのは「誰にでもできる仕事だから」というのが大きいのではないだろうか。
もちろん、他にも理由はある。給料は事業者の収入に応じて決まるが、認可保育所では公定価格が決められているので保育料を勝手に決めることができない。その代わりに補助金が入るものの、微々たるものだ。一方で認可外保育所なら保育料を高くする事もできるが、「安心感」などから認可保育所の方が人気が高く、充実したサービスを売りにした「安心できる」認可外保育所は少数派。
当たり前だが、認可保育所の保育料が低いままでは保育士の給料が上がるわけがない。これと同じ状況は介護士にも起きている。
市場というのは、需要が高くなり供給が追いつかないのであれば価格は高くなるものだ。しかし、保育園も介護施設も学校などと同じように皆が必要とするサービスという観点から価格が固定されており、簡単には上がらない。
この状況で事業者が十分な収益をあげようとするなら、質の向上よりも受け入れる「人間の数」を増やし、「従業員の給料」を抑えコストを減らす他はない。そうなると大きな保育所が必要になり、保育士の給料も安くなる。
まず、根本的に保育料や介護料が据え置かれている限りは自体は改善しないだろう。もちろん、補助金を増やせば良いという意見もある。しかし、それに必要な費用は莫大であり、根本的な解決にはならない。
保育料や介護料を上げても良いのか?
問題は保育や介護にかかる費用を上げても良いのかという問題だ。
無論、公定価格は絶対に必要となる。人々の保育も介護も受け皿となるサービスであり、サービスを受けられない人がいては困るからだ。しかし、需要に対して供給が追いついていない以上、現行のシステムが崩壊しているのは明らかだろう。
保育や介護において、一部の事業所を公定価格で運営する必要があるは理解できるが、公定価格で運営しなくても良い事業者に対するサポートが貧弱過ぎる。
「認可」というのは価格とサービスの両方がマッチしている事業者ではなく、「サービス」が一定の基準を超えている事業者に与えるべきものじゃないだろうか?
今の認可保育所の制度を変えられないのであれば、認可外保育所と認可保育所の中間となる制度を作り(もしかして既に存在する?)、それを広める形で収入を増やし、給料を増やすことはできないだろうか?
何でもかんでも市場原理を使うべきだとは言わないが、制度として崩壊が始まっているのであれば、一度市場原理に委ねて制度を改善してかなければならないと感じている。
そもそも、保育士や介護士の仕事が「誰にでもできる」という考え方自体を変えていく必要もあるが、仮に本当に「誰にでもできる仕事」だったとしても、供給が追いつかない状態で料金があまり変わらず、給料が上がらないのはおかしい。
時々、日本は社会主義国だと言われる事があるが、これでは反論のしようがないだろう。
サービス料が高くなると低所得者が困るという話もあるが、そもそも認可保育所の料金などは家庭の収入割合に応じて決まっている。その割合で調節すれば良いのだから、大きな問題にはならないだろう。
所得税を上げると海外流出が起きるという話もあるが、保育や介護で海外流出が起こる可能性に比べれば、微々たるもの。
保育士や介護士の給料を挙げる方法
一番簡単なのは「補助金を増やす」こと。これはすぐにでもできるし効果も比較的早く出る。
しかし、国がやらない理由は簡単だ。「根本的な解決にならない」上に「財源が確保できない」から。財源の確保についてはやりようがあるかもしれないが、やはり根本的な解決にならないのは痛い。根本的な解決を狙うのであれば、制度を変えていくしか無い。
次に、補助金を増やすこともよりも現実的な方法として挙げられるのは「公定価格の上限を大幅に引き上げる」こと。
根本的な解決とまではいかないが、補助金を増やすよりも解決策としては有効だ。もちろん、次から次へと価格が上がっては困る。事業所のレベル分けするなどで、公定価格の上限に差をつけるのも良さそうだ。
当たり前だが、「保育士」や「介護士」にもスキル差がある。資格に段階をつけるのは現実的ではないが、大切なのは「給料の良い施設」が欲しがる人材かどうかだ。
施設ごとに価格に大きな差があって給料に差があれば、当然「スキルを上げてそこに転職しよう」と思うようになるだろう。今でもそれに近いことは行われていることを願うが、このような「キャリアアップの思考」が正常に働く環境がない限り、給料の向上と人材の流動性は生まれない。
当たり前だが、給料が低くても仕方のない人材もいれば、もっとお金を貰っても良い人材はいる。そのシステムが働く余地のない業界はなかなか健全にならない。
韓国は公立保育園の場合は政府が保育士の給料を支援しており、保育料も無料と聞いたことがあります。少子化対策のためですが最近はそれも難しく有料になりつつあるとはいえ、大型マンション住宅には必ず保育園が設置されていますし、単に国で比較しても行政のやる気の違いとしか思えません。