映画「イミテーションゲーム」見た感想:壮大なスパイ物語の裏側を見た気分

天才数学者であるアラン・チューリングの人生を元にした映画「イミテーションゲーム」を見ました。

極端な言い方をすると、007のQが主人公になった感じかもしれない。第二次世界大戦のドイツの暗号機エニグマの暗号を解読しようとするチームが、変わり者の主人公を中心に解読装置を作ろうとする物語。

以下、あらすじに関してはかなりアバウトに記載しているため、正確ではない可能性があります。

また、最終的なオチまで含めたネタバレがあるので、嫌な方は絶対に見ないで下さい。感想だけ読みたい方はこちら

あらすじ

アラン・チューリングがエニグマの暗号解読部門に配属された所から物語が始まります。またそれと同時に、物語はチューリングの幼少時代や終戦後の現在をザッピングするように描かれます。

幼少時はいじめから助けてくれた友人と暗号解読遊びをしていて、この友人がきっかけでチューリングは暗号解読にのめり込むようになりました。しかし、チューリングはその友人(男)を好きになってしまいます。長期休日明けに告白しようとしていたチューリングでしたが、友人は現れません。後に友人は結核で死んでしまったことを聞かされますが、友人が大切な事を伝えてくれないまま死んでしまったことで、チューリングは一種の人間不信のような状態になってしまいます。

才能があったリューリングはそれから大学で成果を上げ、軍の情報機関があるブレッチリーで働くようになりました。孤独を好み、変わり者のチューリングは同僚から嫌われ、一時は立場が危うくなります。そんな中、暗号解読装置がエニグマ解読の鍵だと信じたチューリングはチャーチルに直訴。暗号解読の責任者に選ばれる事になりました。

当初は紙とペンによる暗号解読に取り組んでいた解読チームでしたが、チューリングは機械方式を推進しました。これはクリストファー(物語では「死んだ友人の名前」、史実ではbombeと呼称)と呼ばれ、エニグマの暗号を短時間で解読することが可能なものです。

中々暗号の解読が進まない中で、チューリングはジェーンという才能ある女学生に注目します。彼女が暗号解読のチームに必要だと感じたチューリングは彼女と婚約することでジェーンを手元におくようになります。

チューリングがチームの責任者になっても中々成果が上がらず、ついに上官はチューリングをクビにしようとします。しかし、ジェーンのおかげでチューリングは同僚にも信頼されるようになっており、「彼をクビにするなら俺達もクビにしろ」と上司に迫る同僚のお陰で仕事を続ける事が可能になりました。

しかし、総当り式で解読していた装置による暗号解読は難航。チームは必死になって解読時間の短縮のための手がかりを探していました。そんな中、ドイツが発信している暗号を記録する女性軍人の言葉をきっかけにチューリングは機械を改良し、エニグマの解読に成功します。

そして、チームはエニグマを解読することで今にも攻撃を受けそうな船舶を割り出すことに成功。すぐに同僚は上官にその情報を伝えようとするのですが、それをチューリングは止めてしまいます。それは「暗号を解読したことを敵に知られないようにするため」という非情な選択でした。結果、チームは暗号解読の事実を徹底的に秘匿します。

チューリングは諜報機関MI6の責任者に協力を仰ぎ、解読した情報を秘匿しつつ敵にエニグマ解読を悟られないように情報提供を行うようにしていきました(諜報機関ウルトラ)。

最終的に戦争に勝ったイギリスでしたが、チームの解散と同時に全ての情報は破棄されることになりました。この時、チームの功績や暗号解読などの情報も完全秘匿され(情報開示は細菌になってから)、誰でも彼らの功績を知らないままメンバーは別々の仕事に就くようになります。

その後、チューリングは大学に務め暗号解読のコンサルタントとして働いていましたが、チューリングは同性愛者でした。ある日、チューリングが買った男娼に盗みに入られたことがきっかけで、チューリングは男色の罪で逮捕されてしまいます。

刑罰には収監とホルモン治療が選べましたが、チューリングはホルモン治療を選びます。この治療は精神的な苦痛を伴うものでしたが、孤独を恐れ、親友として機械を愛したチューリングは収監を頑なに拒みました。

そして、チューリングは若干41歳にしてこの世を去ります。

彼の業績は死後50年以上たってから再評価されましたが、彼が死んだ当時は誰にも知られていませんでした。。

感想

チューリングの変人ぶりや頭のキレが際立つ物語でした。基本的には一人の人生を追っていく物語で、フィクションにありがちな強いドラマ性はそこまで感じません。しかし、暗号解読に尽力し、暗号解読に成功してもその成果を誰にも知られないまま犯罪者として死んでしまったのは悲劇です。

実際、彼の功績は本当に最近になってから分かったものです。古い映画などでは「エニグマは解読されなかった」というナレーションがあるほどで、エニグマが解読されていたという事実自体が長い間隠されていました。

この物語は史実をベースにしているがゆえに、他の物語には無い興味深いポイントがありました。

一つ目は、主人公たちが「情報の選択をしたこと」です。

主人公達は助けられる命を見捨て、戦争に勝つことを優先させました。これは現実世界では本当に大切なことで、目の前の人を助けるために沢山の犠牲にすることについて真剣に考えていた事が分かります。良くある物語では、こういう選択をする人物を「悪人」扱いすることすらありますが、これが現実なんだと考えさせられます。

二つ目は、主人公たちの「功績が秘匿されたこと」です。

解読チームの誰もが自分は暗号を解読したと喧伝したかったはずです。しかし、最後までそれを隠しきって国家の安定のために身を捧げたというのは注目するべきでしょう。本当の英雄は自分の功績を口にしないものと言いますが、それがよく分かる映画だったかもしれません。

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