ビジネスライクって本当は凄く大切な事

「ビジネスライク」という単語はあまり良い意味では使われない。ビジネスライクには「事務的」「職業的」という意味があり、多くの場合「情熱がない」とか「愛想がない」とか「堅苦しい」とか、感情的な部分が足りない時に使われる。確かに、プライベートまでビジネスライクに接するような人だと困り者だが、ビジネスライクな対応というのは実は非常に大切なことだと私は考えている。

当たり前のことだが、仕事で手抜きは許されない。手抜きで仕事をしている時点で「ビジネス」が成立していない。

つまり、「本当にビジネスライクな人」は「与えられた業務に関してはきちんとやる」ということになる。もちろん、「与えられた仕事以外はしない」という欠点があるものの、与えられた仕事をきちんとこなすというのがどれだけ大切なことかは誰にでもわかる。

一方、「ビジネスライクではない人」には感情的な部分がある。気に入った仕事や気に入った顧客に対しては、それこそ情熱的に仕事をし、与えられた仕事以上のパフォーマンスを出してくれるだろう。素晴らしい事だ。しかし、仕事に感情を持ち込む人は「気に入らない仕事」や「気に入らない相手」に対してパフォーマンスが落ちることがある。

また、顧客の要望に対して「過剰な仕事が迷惑になる」ことだってある。自分の感情が入りすぎたあまり、同僚や顧客の目線とズレが生じて先走ってしまうこともあるだろう。情熱的に仕事をすることが必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。

ここまでの説明だとどっちが良いかは微妙なところだが、実は与えられた仕事をきちんと理解しているかどうかで「ビジネスライク」の良し悪しが大きく変わる。

新人やアルバイトが「与えられた仕事」しかしないという場合、実のところ「与えられた仕事」というのは「直接指示された仕事」という意味だ。しかし、仕事をする上で、「本当に与えられている仕事」というのは、上司に口頭や書面で指示されている事だけではない。その業務に携わる上で「本当に与えられている仕事」の範囲は非常に広い。

例えば、アルバイトに「このダンボールの中の商品を棚に並べておいてくれ」と指示を出したとしよう。その結果、アルバイトが「乱雑に商品を出しただけ」、さらに「床に落ちている商品を放置した」場合、これはビジネスライクと言えるだろうか?

もちろん違う。お店の店員として雇用されている時点で、極論すれば「お店の利益になる全ての仕事」を与えられている。本来であれば、雇用された時点で何も言われずとも状況を判断し必要な仕事をする必要がある。その道何十年のベテラン店員であれば、それこそ何も言われなくても全ての仕事をこなすだろう。

ところが、アルバイトや新人は教わらないと出来ないし、指示されないと何をするべきか分からない。また、各々が適当に仕事をしていては非効率だから、効果的に業務を遂行するために上司や同僚が指示を出す

誤解している人が多いが、別に上司が指示を出した瞬間に仕事が発生しているわけではない。

仕事についてよく分からない人間ほど、本当の意味で「与えられている仕事」が理解できないため、指示された仕事しかせずに「やるべき仕事」をやらないなんてことが起こる。

とは言え、ケースによってはビジネスライクの良し悪しの判断が難しくなることもある。

例えば、完全に担当者が分けられているケース。お役所に問い合わせをした時に部署をたらい回しにされるなんてことが良くあるが、「融通が効かない」とか「ビジネスライクな対応」として批判されることが多い。

実のところ、これは単純に「どこの仕事か判断する部署やマニュアル」が存在しないために起こるシステム的な欠陥であり、「ビジネスライクだから不便」になっているわけではない。

そもそも、本当に担当や部署が違う状態で仕事を引き受けたら逆に顧客や他部署に迷惑がかかる可能性があるわけで、親切心から「私がやっておきます」というのはそれなりにリスキーな対応だと理解しておく必要があるだろう。

また、同僚が仕事で忙しくしている時に残業するべきかどうかの判断も難しい。ビジネスライクな人だと、自分の仕事が終わっていればすぐに帰ってしまうだろう。他人の仕事を手伝おうなんて考えないように思われる。

しかし、ここで重要なのは「なぜ残業が発生しているか」という点だ。同僚の仕事が遅いとか、失敗してしまったというのなら、然るべき理由がない限り手伝うべきではないだろう。毎回手伝っていては同僚が成長しないし、お互いのためにならない。

一方、上司が仕事の振り方を間違ったなんてケースももちろん多い。これは同僚には責任がなく、同情に値する状況だ。手伝ってあげたい所だが、当たり前のように手伝って「適当に仕事を振っても部下がフォローしてくれる」なんて上司が思い始めたら最悪だ。

手伝うなら上司のミスをきちんと指摘するべきだし、手伝わないなら同僚が疲れていないかどうかは確認しておくべきだろう。同僚が体調を崩したら、会社だけではなく自分にも不利益が出る。同僚の体調を気にするのも仕事の内と考えよう。体調を崩しそうなら、仕事を引き受けて休ませることも必要だ。

ビジネスライクというのは、本来であれば「感情的にならずに能率重視で作業する」という意味。仕事をする上で「能率」は非常に重要な部分であり、多くの仕事で最も重視される部分だろう。もちろん、感情面が大切な仕事もあるので全てに言える事ではないが、私は日本人にはビジネスライクな部分が足りないように感じている。

日本人の仕事の能率が低いのは統計的に見ても明らかになっているが、これは「感情的に仕事をしている」部分が大きいからなのではないだろうか?

「みんなが残業しているから仕事をする」とか、「ビジネスライクだと冷たく感じるからサービスしよう」という精神のせいで、全体の仕事効率が悪くなってしまっては元も子もない。

もちろん、そのおかげで日本サービスの質が上がっているわけで一概に言える事ではないのだが・・・もう少し、ビジネスライクについて見直して欲しいとは強く感じている。

 

 

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