現実の対義語は何?空想?仮想?理想? どれが最適?

現実の対義語ってなんでしょう? 辞書で調べると「理想」とか「仮想」とか「空想」とか「虚構」が出てきます。どれもしっくり来るようですが、どれもしっくり来ないような気もします。どれも間違いとは言えないのでしょうが、一番ぴったり来るものは何か、ちょっと真面目に考えてみました。

まず、現実を辞書で調べると「今,現に事実として存在している事柄・状態(三省堂 大辞林)」とあり、「いま目の前に事実として現れているもののこと(Wikipedia)」と載っています。

この意味であれば、対義語は「今、現に事実として存在していない事柄・状態」を意味する単語になるでしょう。もちろん、これは単純に否定型にしただけの対義語なので他にもあるかもしれません。

これに対して、各々の単語の定義は以下の通り。

「理想」→「考えうるかぎり最もすばらしい状態。最も望ましい姿。行動の目的となって現実に意味を与える。(三省堂 大辞林)」

「仮想」→「仮に想定すること。(三省堂 大辞林)」「実際にはない事物を、仮にあるものとして考えてみること。仮に想定すること。(デジタル大辞泉)」

「空想」→「現実にはありそうにもないことをあれこれ頭の中で想像すること。(三省堂 大辞林)」

「虚構」→「事実でないことを事実らしく作り上げること。また,作り上げられたもの。作りごと。(三省堂 大辞林)」

こう考えてみると、現実がある種の「望ましくない状態」という意味を内包していないかぎり、「理想」は「現実」の対義語としては意味的に少し遠いイメージがあります。ただ、「理想」には「現実に意味を与える」という要素があり、対比するための存在として「現実」の対義語として現れてくるのではないかと思います。ただ、理想が現実になってしまうことはあり得ます。対義語として必ず使えるとは限りません。

一方、その他の「仮想」「空想」「虚構」には、「現実にはない」というのが意味に含まれるので意味的に近そうです。しかし、「空想」には「頭の中で想像」の要素が入っています。現実は頭の中にはないので当然です。ところが、これによって「空想」の対義語に「頭の中にはないもの」という意味合いが含まれてしまい、「空想」の対義語に「現実」が使いにくくなります。絶対に必要な条件ではありませんが、対義語の対義語には同じ単語が来るのが理想です。「空想」は「現実」の対義語としては少し意味が狭いかもしれません。

となると、「現実」の対義語として最も意味が近いのは「仮想」か「虚構」ということになります。正直、この二つを対義語として挙げても全く問題ないはずです。

しかし、「仮想」と「虚構」が全く同じ意味の類義語と言われると違和感があります。この二つは明らかに若干違うものを表す言葉であり、違う意味がある以上どちらかがより現実の対義語として相応しいはずです。もうすこし、深掘りしています。

「虚構」の「作り上げられたもの」という意味合いはどうでしょう。「現実」は確かに「作り上げられていないもの」ですが、SFや宗教的な世界観なら現実世界を作ってしまうことは可能です。現実は「作り上げられていない」という意味を必ずしも含んでいるとは限りません。もちろん、フィクションに対する現実であったり、作られているか作られていないかという意味で現実と虚構が対比されることはよくあります。しかし、完璧な対義語とはいえないかもしれません。

となると、「仮想」です。「仮想」などはリアルとバーチャルで対義語として使う事も多く、対義語として有力でしょう。特に、「仮」というキーワードがキモです。「仮」というのは「本当のもの,本来のものでないこと。(三省堂 大辞林)」という意味を持っていますが、現実が「本当のもの, 本来のもの」という意味を含みます

「仮」に何かを想定するとき、何に対して「仮」を想定するのでしょう。それは常に「現実」を想定しています。仮想空間を考えるとき、何に対する「仮想」かといえば「現実」に対する仮想です。つまり、「現実に存在していない」から「仮に想定する」のです。

また、「仮想」は他の対義語である「理想」「空想」「虚構」の意味を含み、文脈次第では類義語として使うことができます。「現実」の対義語として最も相応しいからこそ出来ることではないでしょうか。

色々と意見はでそうですが、「理想」「空想」「虚構」「仮想」の全てが「現実」の対義語として使える単語であることは間違いないと思います。しかし、最も相応しいものはどれかと聞かれたら、私は「仮想」だと答えるでしょう。

皆さんはどう考えたでしょうか?

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