映画「トランセンデンス」を見た感想:見る価値は十分にあるけど、期待しすぎは禁物

人工知能が人類を支配しちゃうかも!?
というコンセプトの映画「トランセンデンス」を見たので、あらすじと感想について。あらすじに関してはかなりアバウトに記載していますので、正確ではない可能性があります。

また、最終的なオチまで含めたネタバレがあるので、嫌な方は絶対に見ないで下さい。

あらすじ

とある天才科学者が高性能AIを開発していた。しかし、ある時その科学者が提唱するトランセンデンス(所謂シンギュラリティ)と呼ばれる人工知能の飛躍的進化に反対するテロ組織のテロによって科学者は命に危機に陥った。

科学者の死を恐れた妻は友人である科学者と共に、夫である天才科学者の意識をAIの中にアップロードする。友人はギリギリまでそれに反対していたが、妻はその友人を私的研究室から追い出してAIをネットワークに接続。最終的に夫が入ったAIは独自の進化を始めてしまう。

テロリストはアップロードに協力した科学者を拉致し、AIを止める作戦に協力させようとするが最初は拒否。しかし、人工知能が進化を始め、妻と協力してある街で巨大な研究所を作り始めた事を知って協力を決意する。

テロリストや友人が止めようと画策する中で、人工知能は怪我人の命を救ったり、障害を持った人間を救うことで仲間を増やしていく。また、救った人とネットワークでリンクすることで彼らと意志の疎通をすることが可能になっていた。

初めは人工知能の進化を喜んでいた妻も次第に夫である人工知能の力に恐怖するようになっていく。妻は人工知能の能力を理解してもらうため、テロ組織の襲撃の際にお世話になったFBIや政府の学者に人工知能を紹介する。

これによって政府組織にも人工知能の恐怖が伝わり、政府はテロリストと協力(強攻策の際のスケープゴートにするため)し、人工知能が作った研究施設を破壊しようとする。

撃たれた従業員(人工知能に救われた)がナノマシンで蘇り、太刀打ち出来ない事を知った組織は撤退するが、作戦通り追跡してきた従業員の一人を捉えることに成功。ネットから遮断した施設でナノマシンを採取し、人工知能を破壊するウイルスの製作に成功する。

人工知能が夫ではない別の何かになってしまったこと感じた妻は研究所から逃げ、政府とテロリストが組んだ反抗組織に捕まる。そして、妻は彼らに協力する事を決意し、命の危機を顧みず、人体にも害のある人工知能を破壊するウイルスを体内に入れて研究所に戻った。

妻を疑う人工知能を見た反抗勢力は攻撃を強行。その中で妻は重症を負うが、人工知能は妻を救おうと妻の意識をアップロード。その際にウイルスのデータもアップロードされるような設計になっており、ウイルスによって人工知能は破壊される。

しかし、その時に人工知能の中にアップロードされて意識を夫と共有した妻は、人工知能の中には確かに夫である天才科学者の意識が存在していて、人工知能は人類を支配したり、滅ぼしたりすることなどは考えていなかったことに気づく。

人工知能を誤解していたことに気づくが、ウイルスによって二人の死は間近に迫っていた。それでも、確かに夫がそこに存在し、自分の願いのために様々な研究を行っていた事を知り、思いが通じた二人は満足そうに息絶えたのだった。

ちなみに、人工知能が接続していた影響で世界中のネットワークがダウンして世界はコンピューターが誕生する前の世界に逆戻りするものの、人々はそれでもたくましく生きていくのだった。

感想

コンセプトが「人工知能の脅威」と「人間の愛」から始まっているので、方向性としては少々陳腐な印象(別に悪いことではない)を受けた。とはいえ、人工知能が少しずつ進化していく過程や人間が支配されるのではないかという恐怖の演出、テロリストの存在や最初は人工知能の中に夫の姿を見ていた妻の心境が徐々に変化していく様子などがちゃんと描かれていて面白い。

全体的に面白かったが、要所要所で気になる点があった。小さなことではあるが、さすがに許せなかったのは、最後の最後に妻の命を救うか妻の意識をアップロードするかの場面で、「どちらかしか選べない」という点。しかも、その理由が「電力不足」は少々お粗末と言える。いくら抵抗勢力の攻撃を受けていたとは言え、データセンターも兼ねている巨大な施設でバックアップの電源が無いとは考えられないし、非常時に節約するためのプログラムを組んでいないのは理解できない。

あそこは純粋に、「妻の意志を汲んだ」とか、「意識を共有して誤解を解きたかった」ぐらいにしておくだけで十分だと思う。ああいう流れにしたのは何か理由があったはずだが、もっと良い手があったと思えてならない。

少し気になる点はあったものの、結果的に「人工知能が人類を滅ぼそうとはしていなかった」という点や「人間側が恐怖の中で冷静な判断ができなくなって混乱していた」というのが象徴的に描かれているのは良い。

私も「また人工知能が人類を滅ぼそうとして人類がそれを止める的な話か」と思っていたのが良い意味で裏切られた。このプロットであれば、物語の各所で出てくる「人は未知のものに恐怖する」というフレーズをよく理解できる。

実質的にこの物語のケースでは、「人工知能の考えを理解していれば恐れる必要なんて無かった」わけで、本当に恐怖に駆られた人類が早まって進化の芽を摘んでしまって退化してしまった物語と捉える事もできる。

今後はこういう人工知能関係の新しいタイプの物語が増えてきそうな気がして楽しみではある。

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